弁護士 谷脇 裕子
2016年03月15日(火)
『永い言い訳』の長い言い訳?
西川美和さんの『永い言い訳』(文藝春秋)という小説を読んだ。西川さんの著作を読んだのはこれが2冊目だ。1冊目は『映画にまつわるXについて』という作品で、こちらはエッセイ集だった。私はこの本で、初めて西川さんが映画監督であり、広島県の出身であることを知った。
『永い言い訳』は突然の事故で妻を失った男の物語だが、この作品を読んでひとつ引っかかったことがある。それは、文章全体から感じられる、ある種の【照れ】のような印象だ。
表現媒体や表現手段の広がりとは裏腹に、なぜか表現に対する寛容さ、度量の広さが失われ、ともするとポジティブなもの(たとえば昨今よく耳にする「前に進め」などのフレーズ)しか受け入れられにくくなっている現代社会において、西川さんがおそらく一番表現したい、伝えたいと思っているであろう人間関係の厄介さ、煩わしさと、しかしそれこそがすべてだ!(本作のなかの表現を借りれば「人生は、他者だ。」)という本作を含めた西川さん自身のテーマのもつリアリズムは、重すぎて浮いてしまう。
西川さんの文章全体から感じられる【照れ】のような印象は、人間関係の重すぎるリアリズムと不寛容になった社会とをすりあわせるための長い言い訳のように感じられた。
深読みのしすぎだろうか?
弁護士 今田 健太郎
2016年02月29日(月)
外国人から見た瀬戸内海の島々
弁護士の今田健太郎です。
私は、出張で飛行機を利用することが多いのですが、先日、羽田発広島行きの飛行機の中で、降下中に、私の近くで、「Wow!!!」という大きな声が聞こえました。
ウトウトしていたので、「事故か?」と思って飛び起きると、通路側に座っている外国人観光客と思われる男性が、こちらに手を伸ばして、アイフォンで、カメラを連写しているではありませんか。
窓の外には、瀬戸内海の多島美が広がっています。
日頃、私は通路側の席に座っていることが多いのですが、珍しく、窓側から景色を眺めると、多くの橋やしまなみが、太陽に反射されて輝いていることに、心が洗われる思いでした。
つたない英語で、「席を替わろうか?」と伝えたところ、「席は替わらなくてよいから、かわりに写真をとってほしい。橋や島が綺麗に写るように、よろしく頼むよ。」という難題を突きつけられ、必死で、何枚か連写。
アイフォンを彼に手渡すと、写真をチェックしていましたが、まあ、70点くらいかなという笑みを浮かべて、「サンキュー、ありがとう。」と言っていました。
その後、席の前後を見渡してみると、窓側に座っている多くの乗客が、写真を撮っていることに気づきました。
広島出身の私にとってみれば、たくさんの島があって、橋で繋がっていて、波打ち際も穏やかな、この瀬戸内海の風景は、自分にとっての「海」のイメージであり、慣れっこになっていますが、改めて、外からみると、その風景自体が、「ワンダフル」「スプレンディッド」なのですね。
たくさんの人たちに、広島の海の魅力を知ってもらいたくなった瞬間でした。
以 上