弁護士 谷脇 裕子
2021年12月10日(金)
災害時紛争と「ADR」~新型コロナウイルス感染症に起因するトラブルにも~
今日は、以前にもご紹介したことのある「ADR」についてお話しします。
「ADR」とは、Altanative Dispute Resolution の略で、「裁判外の紛争解決手続」のことを指します。紛争解決というと、一般には裁判所での訴訟を思い浮かべる方が多いと思いますが、裁判は、公開法廷で勝ち負けをかけて争う手続きであり、一般に費用も時間かかります。
この点、ADRは、専門家に間に入ってもらい、話し合いにより紛争解決を目指す手続きですので、非公開で迅速に柔軟な内容の解決を目指せるというメリットがあります。
このADRという手続き、実は、災害時の紛争解決にも大変適しています。災害時には、それに起因したトラブルが発生することも少なくありません。被災した上、ご近所や仕事先などとの間で紛争をかかえることになれば、その負担は大きく、平時以上にすみやかな解決が望まれます。こういった災害時の紛争解決においても、話し合いによる解決を目指すADRは大変有用です。2011年の東日本大震災、2014年の熊本地震、2018年の西日本豪雨災害、2019年に関東各地を襲った台風被害の際にも、多く利用されました。
また、昨今、新型コロナウイルス禍において、契約のキャンセル料を請求された、売上が激減して店の家賃が払えない、自宅待機と言われ給料を払ってもらえない、などのトラブルが起きています。このような紛争の解決にもADRの利用は選択肢となります。
広島弁護士会には、「はなしあいサポートセンター」というADR機関があり、最近ではZoomなどを用いたリモートでの話し合いも可能となっています(はなしあいサポートセンター:082-225-1600)。
また、災害や新型コロナウイルスに起因する紛争については、申立手数料が免除され、成立手数料が減額されるなど、通常の手続きよりさらに利用しやすい制度となっています。
なお、弁護士会ADRの取り組みについては、日本弁護士連合会ADR(裁判外紛争解決機関)センターから、「ADRセンター二十年の歩み」が刊行されています。私も編集委員を務めており、平成30年豪雨災害時の災害ADRに関する記事を寄稿しています(表紙の絵は、向かい合ったひまわりで、日本画家の夫が担当しました。)。記事は、下記URLから閲覧可能ですので、ご興味のある方はぜひご一読ください。
https://www.nichibenren.or.jp/activity/resolution/adr.html