弁護士 上椙 裕章
2018年04月09日(月)
不連続殺人事件
満開の桜を見ているうちに、ふと思いたって、本棚から「桜の森の満開の下」を探し出して読み返していた。
そのままパラパラと他の短編を読んでいるうちに、プチ坂口安吾ブームが訪れた。
坂口安吾といえば、代表作は「堕落論」「白痴」といったところだが、推理小説も書いている。それも、とびっきりの傑作。
東西ミステリー100において坂口安吾の「不連続殺人事件」は、
1985年版で第4位、2011年版で第19位とかなりの上位にランクインしている。
というわけで、ほんとは、「獄門島」を読む予定だったのだが、ちょっと寄り道して
坂口安吾の「不連続殺人事件」。
20年ぶりに読み返してみて、まず登場人物の多さに閉口する。
しかも、そこら中で痴情がもつれているため、余計に人間関係が分からない。
しかし便利な世の中になったもので、ネットで「不連続殺人事件 相関図」なるものを見つけ
「こいつ誰だっけ?」となるたびに相関図で確認する。
まったく内容を覚えておらず、新鮮な気持ちで読み進める。
何人目かの殺人が起きたところで、「あれ?」と違和感を覚えた。
その違和感は読み進めるにつれて大きくなり、メイントリックと犯人が分かったような気がした。結論からいえば、私の推理は当たっていた。
しかし、この本は、20年前に一度読んだ本。謎解きも当然読んでいる。
要するに、記憶の奥底に眠っていたトリックが呼び起こされたのを、都合良くあたかも自分で推理したように錯覚しただけですね(笑)。
でも、とにかく面白かった。作中で繰り返し書かれる「心理の足跡」も、第1の殺人の動機も(これは最後まで記憶の奥底からも湧き出て来なかった。)。
20年前の感動をもう一度味わえたお得感。
しかし、最初から最後まで未読小説として楽しく読めた自分に、若干の不安を覚えなくはない。
私のなかのプチ坂口安吾ブームが終わらない。終わったら、次こそ、「獄門島」を・・・。
弁護士 上椙裕章