弁護士 福田 浩
2016年08月30日(火)
読書を楽しむ
突然ですが,質問です。
次のうちいずれかを選ばなければならないとしたら,あなたはどちらを選び
ますか。
【①】1円をもらう。
【②】10億分の1の確率で,1億円をもらう。
①を選んだあなたは,極めて合理的な考え方をしています。②を選んだあな
たは,普通だけれども,不合理な考え方をされており,詐欺的商法にひっかか
るタイプかも知れません。では,次の質問はいかがでしょうか。
【③】100万円をもらう。
【④】1万分の1の確率で,200億円をもらう。
③を選んだあなたは,普通だけれども,不合理な考え方をされており,お金
が貯まらないタイプかも知れません。④を選んだあなたは,みんなの羨望の対
象なのでしょう。やはり,お金持ちは,合理的な考え方をされ,ますますお金
持ちになるのですね。うらやましい限りです。では,次の質問はいかがでしょ
うか。
【⑤】1円を支払う。
【⑥】10億分の1の確率で,1億円を支払う。
⑤を選んだあなたは,普通だけれども,不合理な考え方をされています。の
みならず,もし,最初の質問で②を選んでいるならば,その考え方も場当たり
的ですね。⑥を選んだあなたは,極めて合理的な考え方の持ち主です。
伝統的な経済学や法学も,経営学も,さらには巷の交渉術も,いずれも「合
理的な考え方をする人」を前提に理論が組み立てられていますが,本当に世の
中に「合理的な考え方」をする人などいるのでしょうか。むしろ,人間(もち
ろん私を含め)は,「考える葦」などではなく,不合理に満ちた考え方をする
動物であって,そうなると,「合理的な考え方をする人」を前提とする理論に
対して疑問を投げかけることができるのではないでしょうか。こんな亜流に興
味がある方に,お勧めの本です。学問,ビジネスのみならず,日常生活にも役
に立つこと請け合いです。
「ファースト&スロー」 ダニエル・カーネマン
「不合理」 スチュアート・サザーランド
「行動経済学の逆襲」 リチャード・セイラー
「影響力の武器」 ロバート・B・チャルディーニ
弁護士 福田浩