弁護士 上椙 裕章
2015年10月30日(金)
Does this bus go to Lancaster Gate?
先日、会議に出席するため高速バスで松江に向かった。
乗り込んだバスはダブルデッカー、いわゆる2階建てバスだった。
ダブルデッカーに乗って、車窓からの風景を楽しむこともなく
夢見心地でウトウトしていると、10数年前にイギリスに行ったときのことを思い出した。
ピカデリーサーカス近くのシアターで「オペラ座の怪人」を見たあと、
パブでギネスを何杯か飲み、
ナイトバスでホテルへ帰ろうと思ったが、方角がはっきりしない。
私の泊まっていたホテル最寄りのバス停はランカスターゲート。
「このバスはランカスターゲートに行きますか?」
「Does this bus go to Lancaster Gate?」
頭のなかで何度も繰り返して、バスに乗り込み、車掌に聞いたところ、
車掌は、「No,wrong way」と言って反対車線を指さした。方向が逆だったらしい。
慌ててバスを飛び降りて、反対車線のバスに乗り、無事ホテルに着いた。
特に大きなトラブルはなく、ただそれだけのエピソードである。
イギリスに滞在した約2ヶ月間、
短期留学で通った大学の学生
ホームステイさせてもらったホストファミリー
訪れた地で出会った人達・・・たくさんの人といろいろ話しただろうに、
「なるほど、そういう言い方するんだ」とか
「格好いいな」とか思ったフレーズもあったのに、
あれから10数年経った今、はっきりと覚えているフレーズは、これっきり。
「Does this bus go to Lancaster Gate?」
いったいイギリスで何を得てきたのか?
いつの日か再びこのフレーズを口にする日が来るのだろうか?
そんなことを想いながら、口ずさんでみる。
「Does this bus go to Lancaster Gate?」
弁護士 上椙裕章