谷脇 裕子弁護士弁護士 谷脇 裕子

2015年10月19日(月)

家庭内ADRのすすめ

みなさんは、ADRって聞いたことありますか?日本語では「裁判外紛争処理」「裁判外紛争解決」などと訳されたりします。難しい議論は後回しにして、要するに、お話し合いで解決しましょうというお話です。
仲裁人(当事者以外の第三者)を間に挟んで、お話し合いをするのです。ルールはとても簡単。相手がおしゃべりしている間は、口を挟まず話を聞くこと。自分の言い分は、相手の話が終わった後にすること、これだけです。
仲裁人は、一方がお話しした後、その話を整理して繰り返し、両方の当事者に聞かせ、確認します。それを聞いたうえで、相手方当事者が自分の言い分を話します。
あとは、その繰り返しです。

この方法が素晴らしいのは、自分の言い分をきちんと相手に聞かせることができること、そして、仲裁人が整理して話す内容を聞いて、自分の言い分を客観的に確認できることです。
この方法、実は、子どもの兄弟げんかにとても有効なんです。ただし、自分の言いたいことをある程度言葉で表現できる年齢になっていることが必要ですが…。

ある兄妹げんか(うちの甥と姪です。)の例をご紹介します。
小学校5年生の兄(慎之助)と小学校2年生の妹(愛子)のけんか。慎くんは、食事中、水泳教室で使った帽子のワッペンが破れていたことを急に思い出し、食卓を離れて水泳バックから帽子を取り出し、かがみこんでワッペンを確認していました。慎くん曰く、そこへ、愛ちゃんがかけより、慎くんのメガネ部分を足で蹴り、メガネのフレームが歪んでしまった、というのです。慎くんはわめきだし、愛ちゃんは号泣…。そこで、仲裁人の出番です。
両者を椅子に座らせ、ルールを説明します。
2人の話は、ちゃんと真面目に聞くから、相手が話している間は口をはさまないこと。いいたいことが思い浮かんだら手元の紙にメモして、自分の順番が来たら話すこと。いいかな?「うん。」
じゃあ、文句を言ってた慎くんの言い分から聞こうか。
慎くん「ぼくがね、水泳の帽子が気になって見てたらね、愛子が蹴ったの。そしたらね。メガネが広がっちゃったの」
わかった。愛ちゃんに蹴られてメガネが広がっちゃったんだね。じゃあ、愛ちゃん、今の慎くんが言ったことは本当?
愛ちゃん「ううん。違うよ。蹴ってないよ。手があたったんだよ。それに、わざとじゃないんだよ。それから、メガネが広がったのは、その後、お兄ちゃんがソファのところに倒れ込んでメガネを落としたの。きっとその時に広がったんだよ。」
わかった、蹴ったんじゃなくて、不注意で手があたっちゃたんだね。メガネは手があたったからじゃなくて、落としたときに広がった。
じゃあ、慎くん、まず、愛ちゃんが蹴ったというのは、見たの?それとも、メガネに何かがあたったから、蹴られたと思ったの?
慎くん「見てはいない。ぼくは頭を下げてたから蹴られたと思った。」
じゃあ、もしかしたら、手があたったかもしれない?
慎くん「そうかもしれない。」
愛ちゃん、手があたった時のことを教えてくれる?何をしてたのかな?
「お父さんがね、ちゃんとご飯を食べてからにしなさいって言ったからね、急いで椅子のところに戻ろうと思ったの。それで手があたっちゃった。」
慎くん、ご飯中だったのかな?「うん。」
お父さんが、席に戻ってご飯を食べなさいって注意した?「覚えてないけど、そうだったかも…。」
じゃあ、愛ちゃんは、急いでいただけかもしれない?わざと蹴ったんじゃないかも、かな?「うん。わざとじゃないかもしれない。」
じゃあ次に、メガネなんだけど、慎くん、広がったのはソファのところで落としたからじゃないの?「違うよ。その時は先にメガネを外して置いたんだよ。」
どうして覚えてるの?「僕はね、まだメガネが新しくてね。前のメガネの時、よく曲げたりしちゃってたからね、それが嫌で、落とさないようにしたり、曲がってないか確認したりしてるの。」
そうか。いつもメガネのことはとても気になっているんだね。
愛ちゃん、手があたった時にもしかしたらメガネが広がっちゃったかもしれない?「手がね、ここ(鼻当てのところ)にあたっちゃったの。だからもしかしたらそのときに広がっちゃったのかな。」
もし、気をつけてたら、メガネに当たらなかったかもしれない?「うん」
じゃあ、これからは気をつけようね。

実は、この話の後には、お父さんがからむお兄ちゃんとのもう1ラウンドがあるのですが、そのお話は、また別の機会に…。

間に第三者を挟む話し合いの良さは、自分が悪かったかもしれないところを見つめ直すことによって、お互いある程度納得して話を終わられせることができることです。一方的に怒られてしまうと、どちらかに不満が残ります。
それから、言葉で、理屈で、戦った場合、自分の言った言葉は自分に返ってきます。言葉による話し合いの習慣をつけることによって、自分への不合理な言い訳は通らなくなり、本当に主張すべき正しいことは何かが見えてきます。

お子さんの兄弟げんかを見かけたら、是非、一度、試してみてください。
もしかしたら、ウィンウィンの解決が目指せるかもしれませんよ。


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今田健太郎弁護士が、令和6年4月30日付北國新聞朝刊に掲載されました

令和6年4月30日付北國新聞朝刊に、能登半島地震の被災地である珠洲市において、 建築士と弁護士がチームを組んで、被災世帯を回って、修繕や制度のアドバイスをする 全国初の「珠洲モデル」が紹介され、今田健太郎弁護士の活動が記事となっています。  能登半島地震の被災者の方々の復旧・復興を祈念しております。

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