弁護士 谷脇 裕子
2013年05月27日(月)
「ル・マル・デュ・ペイ」
「ル・マル・デュ・ペイ」とは、最近話題になった村上春樹さんの新作の中で用いられている表現で「田園が人の心に呼び起こす理由のない哀しみ」を意味するフランス語だそうです(「そうです」、というのは、私自身は本の紹介記事を読んだだけで、本文を読んでいません。)
この「田園が人の心に呼び起こす理由のない哀しみ」というフレーズを読むと、なぜか目の前に情景が浮かび上がり、胸が締め付けられるような感覚を覚えます。今の自分と遠い記憶のようなものが結びつき静かに揺さぶられる気がするのです。
それは、変わらない普遍の風景が、かつての何の不安もなく未来に何かあると信じていた子どものころの感覚を呼び覚まさせ、同時にそれに対する喪失感や諦め、自分だけが変わってしまったという時間感覚の儚さ、人生の短さを教えてくれるからなのか?
国境を越えて人々のDNAに訴えかけてくるような何かをもった表現の存在に、(本は読んでいないのに)感動している最近の私です。