弁護士 今田 健太郎
2012年08月01日(水)
弁護士は不自由業
弁護士の今田健太郎です。
今さらながら、弁護士である自分の得意分野は、トラブルに巻き込まれた人の弁護をすることであり、苦手分野は、トラブルに巻き込まれた自分の弁護をすることです。交渉ごとでは簡単に負けませんが、妻との口論では勝った試しがありません。
我が身には、さっぱり役に立たない職業に就いています。
このような職業とは知らず、憧れを抱いて司法試験を目指した一つのきっかけは、書店で、「弁護士は自由業である。」というフレーズを目にしたときでした。
会社を辞め、弁護士になって自由を謳歌するぞと、苦しい受験勉強を開始したときから、不自由な生活が始まりました。
受験時代は、朝から夜まで勉強が続き、自由な時間などありません。
合格後は、司法研修所で濃密なカリキュラムが組まれており、不自由なことこのうえありません。
何とか抵抗しようと、わずかに空いた時間で異業種交流会などに参加するのですが、開始早々、女性陣から「結婚する気があるのか。」という、絶大なる心理的束縛を生む質問が投げかけられ、あえなく自由恋愛の雰囲気さえ玉砕されます。
こうして、不自由に慣れた頃、弁護士の生活が始まりました。
朝は、子供の送迎に始まり、事務所に到着すると、メールチェック、電話対応、起案、打ち合わせ等に追われ、警察署での接見が混み合い、昼ご飯の時間も確保できないまま慌てて法廷へと駆け込んだならば、裁判官にチラリと時計を確認されるという心理的圧迫を与えられます。
事務所に戻ると、電話メモやメールがまたしても大量に溜まっており、それらを処理していると、あっという間に夕方の時間です。弁護士会の委員会などに出たあとは、顧問先や同業者等との会合が待っており、クタクタになって午前過ぎに自宅に戻ると、今度は足音さえも自由に立てられません。
法廷や日弁連の委員会などで、数ヶ月先の予定まで埋まっていることも珍しくなく、長期旅行など、夢のまた夢です。
近々、「弁護士は自由業である。」と書いていた弁護士を、不実の告知で訴えようと思っています。