弁護士 福田 浩
2012年04月24日(火)
スマートフォン
光陰矢のごとし。iPad2を手にしてから、そろそろ1年になる。こんなことができる、あんなことにも使っているなどと、自慢できるはずだった。出張するとき、おしゃれなビジネスアイテムとしてキャリーして、あとはメールチェックに使っているだけだなんて。スティーブ・ジョブズも想定していなかったのでは。
最新の機械ものに飛びついてしまう性格は治りそうもない。4チャンネルステレオが登場するや、秋葉原に飛んで行ったが、狭い部屋では置く場所のない、無用の長物と化してしまった。ヤマハRZ-350は、デビューと同時に手に入れたが、いきなり碓井峠で転倒してしまった。音質が劣化しないというデジタルカセットテープのレコーダーを買い急ぎ、レコードをダビングしまくったが、これらはすべてゴミになってしまった。Macintoshを手に入れたあと、ショップに行くと、ビジネスユースのソフトはほとんどIBM仕様であることに衝撃を受けた。イノベーター理論でいうリスクテイクのイノベーターとは、まさに私のことである。
携帯電話の販売台数で、スマートフォンが主流となったようである。イノベーターであったとしても、私も馬鹿ではない。数々失敗した経験を積み重ね、教訓を得て、「普通の携帯電話からスマートフォンに乗りかえる必要性がない。買ったら、後悔するぞ。」という合理的な結論に達していた。だから、周りの人にも、まったく興味のないふりをしていた。
スーツの内ポケットからスマートフォンを取り出して、指で操作しながら悦に入っている人が、一人、また一人と増えている。なんだか、とても楽しそう。私の知らない楽しい世界が広がっている。このまま、時代に取り残されてしまっても、よいのだろうか。不安がよぎる。
ふらふらっと、販売店に吸い寄せられる。買うわけじゃない、時間つぶしだ、と言い訳する。妙齢の女性販売員から説明を受ける。機種も出揃っており、機能的にも、価格的にも、買い時のようである。スマートフォンを手にする。自分の携帯電話とほぼ同じサイズだ。iPadとは違って、これなら日常的にキャリーでき、もっと活用できそう。自分の携帯電話を見る。傷だらけである。
気が付くと、契約書にサインしている。いまさら、買うのをやめます、などとは言えない。職業的にも。こうして、スマートフォンを手に入れてしまったのである。ただ、今回は、イノベーターではなく、アーリーアダプターとして行動したことが、唯一の救いであるかもしれない(救いになっていない。)。
弁護士 福田浩