弁護士 福田 浩
2011年10月21日(金)
略語
プルトップを持ち上げる、プシュッ。週末の金曜日、家族の寝静まった後、一人放心状態で、チャンネルをサーフィンしながら、さきいか(炙った一夜干しなら、なおよい。)をつまみに飲むビールは、とても贅沢。
新入社員のころは、ラガーやスーパードライ、その後、バドやハイネッケンと洋物かぶれしてはみたものの、やっぱりコクのある国内ビールが最高。最近では、エビスや一番搾り、プレミアムモルツにハマっている。
最初で、その日最高の一口目をゴクリと飲んだそのとき、テレビでは、丁度、矢沢栄吉の「金曜日はプレモルの日」のコマーシャル。月曜日から頑張って働いた自分へのご褒美に、ちょっと贅沢なビールを買って帰る。その気持ち、わかるなぁ。
ちょっと違和感あるのが、「プレモル」、プレミアムモルツの略称。サントリーは、宣伝広告の草分けなのに、流行りそうにないなぁ、どうしてだろうかと、一本目をグイッと飲み干し、二本目をプシュッしながら、考えてみる。
略語で流行るのは3文字である、と根拠のない仮説を検証する。「テレカ」「コンパ」(古いなぁ)、「ヨシギュー」「ラブホ」(「連れ込み」は4文字だったけど)、「セブン」「ファミマ」(「コンビニ」は4文字か)、「あきば」、「いたしゃ」(イタリア車の略称ではなかったのね)、「ベガス」「シスコ」(「ロス」は違うなぁ)、「アプリ」「コピペ」(「パソコン」は4文字)。
コピーライター気分で、プレミアムモルツの略称ねぇ、「プレモ」「プレッツ」「プレミ」かなぁ、「ピーモル」「PMT」はどうだろう、今のうちに商標登録しておこうかしら、などと、酔いに任せて、愚にもつかないことに思考はめぐる。
「プレモル」に違和感があるのは、文字数の問題ではなさそう。さきいかがなくなったので、娘が楽しみに取り置いているピーナッツ入りの柿の種をつまみに、考えてみる。略語は、仲間意識を確認しあう「隠語」のような、草の根的、自然発生的なものではなかろうか。アメーバー的に使われる範囲が拡大し、関心がなかった人も、時代に取り残されまいと、あせって使うようになる、そんなプロセスで、流行が進展するのでは。
そういったプロセスなしに、お上やマスコミが略語を使うと、お前ら、これからはこう呼べよ、みたいな上から目線がとても嫌。ガンジーに成り切れない私は、そんな略語を口にするのも、気恥ずかしい。総務省やマスコミが唱道している「地デジ」にも、プロパガンダに無思慮に従う気恥ずかしさを感じるのは、私だけかなぁ、草薙君は好きだけど。
いつの間にか、ソファーでうたた寝。翌朝、ビールくさい、後片付けしておいて、という妻からの小言と、またパパが私のお菓子食べちゃった、という娘の泣き声で、ささやかに幸せな休日の一日が始まった。
弁護士 福田浩